前回の記事では、映画「リズと青い鳥」を見た直後に思ったことを書き記したんですけど、いま振り返ると思い出すのは希美が言った「物語はハッピーエンドがいい」です。リズと青い鳥はハッピーエンドだったのだろうか、なんてことを考えてしまってモヤモヤするのです。
「リズと青い鳥」は「響け!ユーフォニアム」シリーズから派生したスピンオフ作品。響けシリーズ第2期では希美とみぞれの関係の話も出てきます。そこで問題は解決したと思っていたのですが、二人の関係性はまだまだいびつなものだったんですね。リズと青い鳥の序盤だっただろうか。希美は本作のタイトルにもなっている「リズと青い鳥」の絵本を読んでこう言います。
「物語はハッピーエンドがいい」
リズと青い鳥は、リズの家に青い鳥がヒトとしてやってきます。しかしリズはそのヒトが青い鳥だと気づきます。青い鳥さんには大空に羽ばたいてほしい。そんな気持ちを抱き始めるリズ。ラストはリズが青い鳥に羽ばたいて、さようならと別れを告げます。青い鳥はリズの想いに答え羽ばたいていきます。こうしてリズと青い鳥は別々の道を歩み始めていくのですが、希美は「青い鳥はいつでもリズの元に帰ってきていいのに」と言うのです。これは希美とみぞれの関係性をリズと青い鳥に当てはめているから出た言葉でしょう。リズがみぞれで青い鳥が希美。希美は一度みぞれの元から離れます。でもそれはリズ(みぞれ)が青い鳥(希美)に羽ばたいて、といって送り出したわけではありません。青い鳥(希美)が勝手に飛んで行っただけです。そしてなんとなしにリズ(みぞれ)の元に戻ってきた。絵本「リズと青い鳥」とは違うのです。
本編のラストではみぞれが青い鳥がどういう気持ちでリズの元を去ったのか考え気づく場面があります。その考えだと、青い鳥がリズの元へ戻ってくるのはリズが悲しむことに繋がるため青い鳥はリズの元には帰ることはないでしょう。対して希美はリズの元へ帰ってもいいのにという考え方。ここに二人のすれ違いの根本があるように思いました。それは希美がリズと青い鳥の物語を自分たちに重ねすぎたところにあるんじゃなかろうか。希美は昔からこの「リズと青い鳥」を読んで育ちました。だからコンクールの自由曲に決まった時、懐かしいという印象を抱いたでしょう。そして物語を再び読んだとき、みぞれと私の関係性に似てる!と思い込みが始まったのかもしれません。それこそリズがみぞれで青い鳥が私、希美という思い込みが。
対してみぞれは「リズと青い鳥」の物語を知りませんでした。だからこそフラットに物事を見つめることができ、青い鳥さんの想いをくみ取ることができたんじゃないかと。そういった生き方も考えれば考えるほど面白くなってくるんですけど。
やはり気になるのは「物語はハッピーエンドがいい」。どうしても気になってしまう。そこには映画が苦手な私がいるからかもしれない。映画は基本的に2時間程度で起承転結が起こります。きれいな起承転結なら良いのですが、尺の都合上どうしてもテンポが早くなったり、無理やり終わりを持ってくる映画もあります。今回の「リズと青い鳥」は物語の途中から途中を描いた作品。ラストはきれいに描かれていますが結局途中で終わっているのです。
希美とみぞれの二人の関係を描いた作品なのに、二人の関係が再構築されて終わっただけで、じゃあその後二人の関係はどうなっていくの!? と気になるばかり。映画のラストだけを見ればハッピーエンドのようにも見えます。しかし本当にハッピーエンドなのか。物語をどこで切るかによっても評価は違ってきます。
希美の「ハッピーエンドがいい」はどこかメタ的な発言にも思えてきて、この映画はハッピーエンドなんだよと訴えかけてくるような、そんな印象を受けるのです。だから私はこの映画をハッピーエンドと思うことにしています。
やはり原作を読んで補完させたほうがよいのかもしれない。頭からハッピーエンドが離れない。