瞳に映す演出
©TYPE-MOON / FGO7 ANIME PROJECT
昨日FGOを見ていて、牛若丸が魔獣と衝突するその瞬間を藤丸の瞳で映すシーンがあって、この演出いいなあと思っていたのですが今日「本好きの下克上」を見ていたら同じく主人公マインが見ている景色をマインの瞳から映すシーンがあって、やはり私はこの瞳に映す演出がたいへん好きなんだなと実感。
©香月美夜・TOブックス/本好きの下剋上製作委員会
ということを言いたいだけの記事なので、ここで終わっても良いのだけどこれだけでは味気ないしTwitterの140字でよくないか?と思うので他にもこういった瞳の演出がないか調べてみた。
瞳に映す人と風景
ちょっと調べるだけでも先駆者は簡単に見つかるもので、以下の記事を発見。
アニメの瞳の描写を調べてみた (ストレイン・瞳に映る描写・個性的な瞳) | これは何のブログですか? What is this Blog?
上記の記事の中に『瞳に映る描写』として『まどマギ」や「魔法科高校の劣等生」、「氷菓」が紹介されています。
瞳に映る描写は主に2つの場面に分けられていて、一つは「相手と見合う」場面、そしてもう一つは「風景を見る」場面。
要は「人」か「風景(モノ)」かという当たり前な話なんですけど前者の「人」の場合、相手を見つめている時、相手もまた自分を見つめているという時に瞳に映る描写で描かれやすい。
本好きの下克上はまさに「人」を見ている場面。マインの瞳にベンノさんが映っているが、この場面ではマインは目の前のベンノを見ているようで実際は自分自身のことで頭がいっぱい。目の前を見ているけれど見ていないといったような印象も受ける。
瞳に映っているその人物よりも自分自身に焦点が当たっていて、とても印象的なカットになっていました。
対してもう一つの「もの、風景を見る」場面。紹介した記事の中では青空を見たり、花火を見たりと美しい風景を見ている場面が紹介されています。
美しい風景を瞳の中から描くことで、キャラクターと一緒にその美しい風景を見ているような気持ちになれてより作品に入り込めるのはとても良い。
一番にあげたFGOのシーンでは主人公藤丸の瞳に映っているのは牛若丸と魔獣との一戦。見ているものは「人」なのだけど、ここでは人と見合っていないため風景としての要素も強い。
勝敗が決する最後の衝突を主人公がその瞳で見ていた、という演出がこの後の藤丸の強い気持ちと行動力に繋がるところで、良い演出となっている。
そのほかの「瞳に映る演出」
瞳に映る演出はアニメーションに多く登場する演出・手法の一つですが、先にあげた2つのカット、そして紹介した記事には載っていなかった『瞳に映る演出』のシーンを一部紹介しておこう。
(C) 吉田秋生・小学館/Project BANANA FISH
「BANANA FISH」2話。
アッシュが英二の大ジャンプを見つめている。目をばっちり見開いて見ているのが印象的。
©はせつ町民会/ユーリ!!! on ICE 製作委員会
「ユーリ!!! on ICE」9話。
勇利がヴィクトルを見つめ「引退まで僕のこと、お願いします」と伝える場面。真剣な目つきに映るその先にいるのがヴィクトルなんですよ。このあとのヴィクトルの「プロポーズみたいだね」は伝説。
(C)貴志祐介・講談社/「新世界より」製作委員会
「新世界より」23話。
早季の瞳に瞬の後ろ姿が映る演出ですが、早季から早季の瞳、そして瞬の姿が描かれるワンシーンは画像では伝えられなかったのでここだけ動画。髪の揺れさえも瞳に描いていて、強いこだわりを感じるシーンです。
©ProjectGRANBELM
「グランベルム」5話より。
無数の緑の光を見つめる満月の瞳。グランベルムはこの他にも何回か瞳に映る演出があるため、こういうカットが好きな人がスタッフにいると思われる。
©手塚プロダクション/ツインエンジン
「どろろ」OPより。
どろろを撫でて、百鬼丸の死んだ瞳に光が入り瞳にどろろが映る演出はこの作品の魅力を物語っていて、とても良い映像に仕上がっている。
©岡本健太郎・さがら梨々・講談社/ソウナンですか?製作委員会
「ソウナンですか?」6話。
なんの瞳?と思うかもしれないがうさぎである。うさぎの瞳に映る狩人の姿。生き残るためには殺さねばならない弱肉強食の世界をうさぎの瞳から描いたワンシーン。このあとブラックアウトするのだからけっこう残酷なシーンでもある。
©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会
「響け!ユーフォニアム2」5話より。
関西大会に出場し「三日月の舞」演奏はじめのカット。滝先生が指揮をする姿を見つめながら演奏がスタートする。麗奈のトランペットの指使いも美しく、ここから演奏終了まで瞬きなんてできやしない。
最高。
勝利。
つよい。
©おおじこうじ・京都アニメーション/岩鳶高校水泳部
「Free!」10話より。
凛が遙を一緒に泳ごうと誘う場面。「見たことのない景色、見せてやる」は名言。
(c)米澤穂信・角川書店/神山高校古典部OB会
「氷菓」1クール目OPより。
奉太郎の瞳に映る大空。このカットは紹介した記事の中にも取り上げられていますが、アニメの中で一番好きな作品なので紹介。京都アニメーションもこの瞳に映す演出は色々な作品で使っているんだなと今回改めて気づかされた。
最後に「Re:ゼロから始める異世界生活」の第1話の瞳に映る演出を紹介する。
©長月達平・株式会社KADOKAWA刊/Re:ゼロから始める異世界生活製作委員会
第1話ラスト。スバルがエミリアに話しかけるも、エミリアに拒絶を示されて終わるシーン。このあと第1話のサブタイトルがバーンと出る演出で、続きがとても見たくなる良い仕上がりとなっていた。
このシーンについて監督自らがインタビューの中でこう答えている。
渡邊:結局、自分が見えているものは偽物だということを表現したかったんです。目の前の人は今までの人ではないと。表情も感情もないけど、知ってる人なんです。それを何とか最後に表現できないかなと。しかもここから話が進んでいく象徴的なカットにしたいなと思って、映り込みの虚像で最後締めるみたいな。
映り込みの手法は好きで他作品でもよく使っているんですけど、更に目パチで繋いでいくというのも実験でやってみたくて。最初は自分たちが映っているけど、最後に映っているのは自分の虚像で、最後にタイトルがバーンみたいにやったらカッコイイんじゃないかなと思って。
目の前に映っているエミリアは今までのエミリアではない。最後はエミリアの瞳にスバルの姿が映し出されることで、虚像の主人公が出来上がる。そして第1話タイトル。完璧な仕上がりでした。
以上、瞳に映す演出が好きなんだよねって話でした。
最後までご覧いただきありがとうございます。